10,慶次と兼続の事情シリーズ①『親友の秘密』
「大学に入ってからの、趣味なんだ」
重々しい口調で、兼続は続ける。
「高校の時の部長が美人で可愛くて、でも告白したら玉砕して、それで……自分でその姿を……って気持ちから、女装に目覚めてしまって。それで、月に二回、こうして……慶次、スマンっ!いつか話そうと思っていたが、黙っていてマジでスマンっ!」
深々と頭を下げた兼続だったが、セミロングのウイッグが。
落ちた。
慶次は慌ててそれを拾うと、兼続の腕を取って脇の小道に引き連れた。
ビックリする兼続へ、無造作にウイッグを被せる慶次。そこに、通りを一人のおばさんが過ぎていった。こちらを、チラッと見ながら。