11,慶次と兼続の事情シリーズ①『親友の秘密』
部屋に上がり込んだリマは、慣れた感じでパソコン前の椅子に座った。
そんな姿をかれこれ三年見ている慶次は、リマだろうが兼続だろうが、親友が好きなことをしているのだからと、問い詰めることも、ヤメさせることも、逆におちょくったり、はやし立てたりすることも無かった。
一見すれば、彼氏の家で彼女がくつろいでいるという、平和な光景だ。
冷蔵庫から缶ビールを二本持ってきた慶次は、一本をリマに手渡す。
「さんきゅ~♪」
あの、田無での衝撃の日から比べると、リマとしての声は、少し女性っぽくなってきているような気がしないでもない。メイクの腕も、間違いなく上達しているし、何よりも肩甲骨まで伸びているのは、地毛だ。
個性を大切にする会社に就職をしたからか、その髪の長さを咎められることはないそうだ。