ラビリンス・フェスティバルの成功から数週間が経った。女装サロンラビリンスの評判はさらに高まり、新しいお客さんも増えてきた。常連メンバーとしての僕の仕事も忙しくなり、葵さんと接する時間も増えてきた。けれど、「24時間365日女装を続ける覚悟」という条件は、まだ僕にとって大きな壁だった。
女装サロンラビリンスに新メンバー登場
そんな中、また新たな訪問者が現れた。彼の名前は光一さん。彼は30代後半の寡黙な男性で、サロンのドアをくぐると、少し恥ずかしそうに俯いていた。
「初めまして、ここが女装サロンラビリンスで間違いないですか?」
葵さんが優しく微笑みながら迎え入れる。
「はい、ようこそ女装サロンラビリンスへ。今日はどんなご希望ですか?」
光一さんは小さな声で、「女装をしてみたい」と告げた。その声には、自分を変えたいという決意が感じられた。
僕はその姿に、初めて女装サロンラビリンスを訪れた自分の姿を重ねた。かつて僕も、ここに来る前は自分に自信がなく、何かを変えたいという一心で扉を開けたのだ。
光一さんの変身
女装サロンラビリンスの魔法は、光一さんにも効果抜群だった。葵さんの手によって、彼はウィッグとメイクで見違えるほどの美しさを手に入れた。
「光一さん、素敵ですよ。」
葵さんのその一言に、彼は照れながらも嬉しそうに微笑んだ。
常連のユリカさんも、感心した様子で言った。
「初めてでこれだけ似合うなんて、光一ちゃん、将来有望よ!」
それをきっかけに、光一さんはすっかりサロンに馴染むようになった。彼もまた、女装を通じて少しずつ自信を取り戻しているように見えた。
新たなプロジェクトの提案
そんなある日、葵さんから新しいプロジェクトの提案があった。
「女装サロンラビリンスの魅力をもっと広めるために、みんなでSNSを活用してみませんか?」
ユリカさんはすぐに乗り気になり、
「いいじゃない!ラビリンスの魅力をたっぷり見せつけてやりましょう!」
と大興奮。涼子さんも、
「映える写真なら僕に任せてください。」
と頼もしい姿を見せた。
僕も賛成だったが、正直少し不安もあった。自分の女装姿がネットに公開されることに抵抗があったのだ。だが、葵さんの情熱に押され、挑戦してみることにした。
女装サロンラビリンスのSNSデビュー
初めての撮影会がサロン内で行われた。僕たちは普段以上に気合を入れてメイクや衣装を整え、カメラの前に立った。涼子さんは撮影にも長けていて、プロのようにポーズを指導してくれた。
「優斗ちゃん、もっと笑顔を作って!はい、いい感じ!」
「ユリカさん、ドレスの裾をもう少し広げてください。」
楽しい雰囲気の中で撮影が進み、出来上がった写真はどれも素晴らしいものばかりだった。それをSNSに投稿すると、すぐに多くの反響があった。
「女装サロンラビリンス、すごく楽しそう!」
「こんな素敵な場所があるなんて知らなかった!」
ポジティブなコメントの数々に、僕たちは大いに励まされた。
葵さんとの特別な時間
撮影会が終わり、皆が帰った後、葵さんが僕に声をかけた。
「優斗さん、少しお話ししませんか?」
彼女に誘われて、サロンの一角にあるカフェスペースで二人きりになった。
「最近、優斗さんがすごく頑張ってくれているのが嬉しいんです。」
彼女のその言葉に、僕は思わず顔が赤くなった。
「いえ、僕はまだまだで……葵さんに比べたら何もできてないですよ。」
すると彼女は首を横に振り、優しく微笑んだ。
「そんなことありませんよ。優斗さんがここに来てくれたおかげで、ラビリンスがもっと明るくなりました。」
その言葉を聞いて、僕の胸の中に温かいものが広がった。そして、改めて決意した。葵さんの期待に応えられるよう、もっと自分を磨こう、と。
ライバル心、再燃
だが、そんな穏やかな時間も長くは続かなかった。次の日、涼子さんが葵さんに新しい企画を持ち込んでいたのだ。
「葵さん、次は動画配信にも挑戦してみませんか?」
彼の提案に葵さんは感心し、
「いいですね!ラビリンスの活動がもっと多くの人に届くかもしれません。」
と嬉しそうだった。
その様子を見て、僕の心に嫉妬の炎が再燃した。涼子さんがどんどん葵さんに近づいていくように感じられたのだ。
「俺も何かしなくちゃ……」
ライバル心を燃やしつつ、僕も新しいアイデアを考えることにした。
大成功の裏に隠された不安
動画配信が始まり、女装サロンラビリンスの人気はさらに上昇していった。サロンには新しいお客さんが増え、常連たちもますますやる気を見せていた。
だが、その反面、葵さんが忙しさで疲れているように見えた。サロンの運営だけでなく、新たなプロジェクトにも力を注いでいる彼女を見ていると、僕は何とか力になりたいと思った。
「葵さん、何か手伝えることがあれば言ってください。」
「ありがとう、優斗さん。でも大丈夫ですよ。」
そう言って微笑む彼女の姿は、どこか無理をしているように見えた。
覚悟を決めた夜
その夜、僕は一人でサロンに残り、鏡の前に座った。
「24時間365日女装を続ける覚悟があるか……」
女装サロンラビリンスでの日々を思い返しながら、これからの自分をどうするべきか真剣に考えた。そして、気づいた。僕にとって女装は、ただの趣味ではなく、自分を表現する一つの方法になっていたのだ。
「よし、決めた!」
僕は覚悟を固め、葵さんに自分の想いを伝えることを決意した。