女装サロンラビリンスでの生活がすっかり日常になっていたある日、新しいメンバーがサロンに加わった。名前は「涼子さん」。といっても、涼子さんは本名ではなく、女装する際に使っている名前だ。彼は若いながらも堂々とした雰囲気を持ち、初めてのサロン訪問とは思えないほど物怖じしない態度だった。

「初めまして。女装サロンラビリンスの噂を聞いて、来てみました。」

彼の美しい顔立ちとプロ並みのメイク技術に、僕や他の常連たちは思わず驚いてしまった。ユリカさんですら、「新人なのに、なんて完成度!」と舌を巻いているほどだ。

しかし、涼子さんはその端整な外見とは裏腹に、どこか挑発的な態度を見せた。
「ここって、ただ楽しく女装するだけの場所なんですか?」
その言葉に、一瞬サロンの空気がピリついた。


涼子さんの挑戦状

「女装サロンラビリンスは、もっと特別な場所だって聞いてたんですけどね。」

涼子さんのその言葉は、僕にとっても衝撃だった。確かに、女装サロンラビリンスは普通のサロンではない。葵さんの心が込められたこの場所には、単なる趣味を超えた魅力がある。それを否定されたような気がして、胸の中がざわついた。

「涼子さん、女装サロンラビリンスは確かに特別な場所です。でも、特別さを感じられるかどうかは、自分次第じゃないでしょうか?」
気づけば僕は、葵さんの代わりにそう言い返していた。

すると、涼子さんはニヤリと笑い、
「じゃあ、その特別さを教えてもらおうかな。」
と挑戦的に言い放った。


女装サロンラビリンスでの特訓

その日から、涼子さんは頻繁にサロンに通うようになった。彼は本当に女装が好きなようで、メイクや衣装の細部にまでこだわりを見せていた。葵さんも彼に優しく接しながら、ラビリンスの理念を少しずつ伝えていく。

「ここは、ただ美しくなる場所じゃありません。自分の新しい一面に気づく場所なんです。」

その言葉に、僕自身も改めて女装サロンラビリンスの価値を考えさせられた。そして、涼子さんの加入によって、サロン内には新たな活気が生まれ、僕たち常連たちも刺激を受けるようになった。


ライバルと認めた瞬間

一方で、涼子さんの存在が僕を悩ませることもあった。それは、彼が葵さんに少しずつ近づいているように見えたからだ。葵さんに教えを請う彼の姿は、僕の目には「ただの新メンバー」以上のものに映った。

「葵さん、本当に丁寧に教えてくださるんですね。こんな素敵なサロン、他にはありません。」
涼子さんの言葉に、葵さんが優しく微笑む。その光景を見るたび、胸がチクチクと痛むのを感じた。

「優斗さん、大丈夫?」
ユリカさんがそんな僕の心情を察して、声をかけてくれた。
「ライバルができたからって焦らなくていいのよ。女装サロンラビリンスのオーナーは簡単にはなびかないわ。」

「え、ライバルって……」
否定しようとしたが、心のどこかでそれを認めざるを得なかった。涼子さんは僕のライバルだ。そして、葵さんにふさわしい存在になるためには、僕ももっと頑張らなければならないと思った。


女装サロンラビリンスの危機

そんな中、サロンを揺るがす事件が起きた。ある日、常連の一人がネットに投稿したサロンの写真が、意図せず炎上してしまったのだ。匿名の誹謗中傷や「ここは変な人が集まる場所だ」といった心ないコメントが飛び交い、サロンには電話での嫌がらせも増えてしまった。

葵さんは毅然とした態度を崩さなかったが、スタッフやお客さんたちの間には不安が広がっていく。そんな中、僕たちは一致団結し、サロンを守るために立ち上がった。

「女装サロンラビリンスは、私たちの大切な場所です。こんなことで負けません!」
ユリカさんの力強い言葉に、涼子さんや僕も大きくうなずいた。

「僕も、女装サロンラビリンスが大好きです。だから、絶対に守りたい。」

僕の言葉に、葵さんは感謝の笑顔を向けてくれた。その瞬間、改めてこのサロンのために全力を尽くそうと決意した。


一致団結するメンバーたち

僕たちは、ネット上での誤解を解くために積極的に情報を発信することにした。女装サロンラビリンスの魅力を正しく伝えるため、サロン内の日常や、訪れるお客さんたちの笑顔を投稿していく。

「優斗さん、すごいじゃない!この写真、めちゃくちゃいいわよ!
ユリカさんや涼子さんの協力もあり、投稿は徐々に多くの人に届き始めた。すると、「ここ、行ってみたい!」「素敵な場所ですね」というコメントが増え、サロンに対する風当たりも少しずつ和らいでいった。


涼子さんとの本音の対話

事件が一段落した頃、涼子さんと二人きりで話す機会があった。彼はいつもの挑発的な態度を崩し、少し真剣な表情をしていた。

「優斗さん、正直言うと、最初はここを見下してたんです。女装なんて、ただの趣味だろうって。でも、違いましたね。」

彼の言葉に驚いた。あの堂々とした涼子さんが、そんな風に思っていたとは。

「ここはただの女装サロンじゃなくて、自分を肯定できる場所なんですね。優斗さんが楽しそうにしてるのを見て、そう思うようになりました。」

涼子さんの本音を聞き、僕も素直に心の内を明かした。
「僕も、最初はただの好奇心で来たんです。でも、女装サロンラビリンスに出会って、少しずつ自分を好きになれるようになりました。」

その会話を通じて、僕と涼子さんの間には奇妙な友情が芽生えた。そして、ライバルという意識は変わらないが、互いに認め合う関係になった気がする。


葵さんへの再挑戦

「優斗さん、イベントがまた近づいています。次回もぜひ、一緒に参加しましょう。」
葵さんからそう言われたとき、僕は前より自信を持って答えた。

「はい、葵さんと一緒なら、何だって挑戦できます。」

次回のイベントを目指して、僕たちはさらに女装に磨きをかける日々を送ることになった。そして、この先の展開では、葵さんの隠された本当の思いや、女装サロンラビリンスの真の目的が少しずつ明かされていく――。