次なる目標は、女装サロンラビリンスが主催する一大イベント「ラビリンス・フェスティバル」だ。これは、女装サロンラビリンスの名前を広めるため、毎年行われる大規模な交流会で、全国から女装愛好者が集まる一大イベントだという。

「今年は特に規模が大きくなるから、みんなで力を合わせて準備を進めましょう!」
葵さんがそう宣言すると、サロン内のメンバーたちに活気がみなぎった。


フェスティバルに向けた準備の日々

女装サロンラビリンスでの準備は、イベントに向けてますます熱を帯びていった。僕たち常連メンバーは、衣装選びからステージ演出、さらには来場者向けの体験コーナーの運営計画まで、やることが山積みだった。

「優斗ちゃん、このコーナー担当してみない?」
ユリカさんが僕に差し出したのは「初心者向け女装体験コーナー」の企画書だった。

「えっ、僕が?」
「そうよ。女装サロンラビリンスで一番成長したのは、あんたなんだから。」

おだてられている気もしたが、正直なところ、少し嬉しかった。僕は初心者だった頃の自分を思い出しながら、「どうすれば参加者が楽しめるか」を考え始めた。

「大丈夫だよ、優斗さんなら。僕も手伝うからさ。」
涼子さんも声をかけてくれる。彼とはライバル関係だと思っていたけれど、いつの間にか協力し合える仲間になっていた。


葵さんとの距離

準備を進める中で、葵さんとの距離が少しずつ縮まっているのを感じた。仕事が終わると、彼女とサロンの片隅で話をするのが習慣になっていた。

「優斗さん、本当に頑張ってくれていますね。ラビリンス・フェスティバルが成功したら、私……もっとこのサロンを広めたいんです。」

「もっと広める?」
「はい。この女装サロンラビリンスが、ただ女装を楽しむだけの場所じゃなく、心を解放できる場所だって、もっと多くの人に知ってほしいんです。」

その言葉に、葵さんの強い情熱を感じた。同時に、彼女を支える存在になりたいという想いが一層強くなった。


ラビリンス・フェスティバル当日

ついに迎えたラビリンス・フェスティバル当日。朝から会場は多くの参加者で賑わい、女装サロンラビリンスのブースにも行列ができていた。僕たち常連メンバーはそれぞれの持ち場で忙しく働いていた。

初心者向け女装体験コーナーは大成功で、参加者たちは初めてのメイクや衣装に驚きながらも笑顔を見せてくれた。そんな中、僕はふと、葵さんの姿を探していた。

彼女はステージ横で、一人一生懸命に演出のチェックをしていた。その真剣な横顔を見ていると、思わず胸が熱くなった。


事件発生!ライバルの妨害

フェスティバルも中盤に差し掛かったころ、突然、ステージ機材が故障するというトラブルが発生した。原因は他団体からの妨害工作だったらしい。どうやらラビリンス・フェスティバルの成功を快く思わない一部の勢力が、わざとトラブルを仕掛けたのだ。

葵さんは落ち着いた様子で対応を指示していたが、予定されていたメインステージのパフォーマンスができない可能性が高まった。

「このままじゃ、イベントが中途半端で終わっちゃう……!」
ユリカさんや涼子さん、他のメンバーも困惑していた。

そんな中、僕は思い切って提案した。
「僕たち常連メンバーでステージに立ちましょう!女装サロンラビリンスの魅力を、直接伝えるんです!」


即席ステージでの挑戦

僕たちは急遽、サロンで普段楽しんでいるようなパフォーマンスを披露することに決めた。テーマは「女装を楽しむ喜び」。メイクアップショー、ファッションショー、そして一人ひとりが語る「ラビリンスの魅力」。

「私にとって、女装サロンラビリンスは、心の拠り所です!」
「ここに来ると、性別に縛られない自由を感じます!」

観客たちは、僕たちの言葉に耳を傾け、拍手を送ってくれた。最後に僕がマイクを握り、葵さんの方を見ながら言った。

「この女装サロンラビリンスで過ごした時間は、僕にとってかけがえのないものになりました。自分を好きになる勇気をくれたこの場所に、僕は心から感謝しています!」


葵さんの涙

パフォーマンスが終わり、僕たちが舞台を降りると、葵さんが泣いているのが見えた。彼女は手で目元を覆いながら、笑顔で言った。
「みんな、本当にありがとう……。こんな素晴らしいメンバーに囲まれて、私は幸せです。」

その言葉を聞いた瞬間、僕の中で何かが弾けた。


決意の告白

イベントが終わり、後片付けをしている最中、僕は葵さんを呼び止めた。

「葵さん、今日のイベントで、僕はもっと強くなれた気がします。そして……やっぱり、僕は葵さんのことが好きです。」

彼女は少し驚いた表情を見せたが、次に微笑んだ。
「優斗さん、ありがとうございます。でも、覚えてますよね?私と付き合うためには……」

「はい、24時間365日女装を受け入れる覚悟が必要だって。」
彼女は頷き、静かに僕を見つめた。

「それでも、僕は葵さんと一緒にいたい。だから、もっと自分を好きになって、もっと女装を楽しめるように頑張ります!」

葵さんは少し照れたように微笑み、
「じゃあ、もう少しだけ待っていますね。」
と優しく言った。