女装サロンラビリンスで過ごす日々は、僕にとって特別なものになっていた。葵さんへの想いはもちろんのこと、この女装サロンでしか感じられない安心感と解放感は、他では得られないものだった。しかし、僕が求める未来のためには、もう一歩踏み出す必要がある。

「24時間365日女装を続ける覚悟があるか」
この条件は、葵さんと付き合うためだけでなく、自分自身をもっと受け入れるための試練でもあるように思えた。


葵さんへの相談

ある日の閉店後、葵さんと二人きりになれるチャンスが訪れた。勇気を振り絞って、僕は自分の迷いを打ち明けることにした。

「葵さん、僕……まだ完全に覚悟ができていないんです。でも、どうしてもこの女装サロンラビリンスで学んだことを無駄にしたくなくて……。」

葵さんは僕の話をじっと聞いた後、少し考えるように間を置いた。そして、静かに微笑んで言った。
「優斗さん、無理に答えを急ぐ必要はありませんよ。この女装サロンラビリンスは、いつでも優斗さんを迎える場所ですから。」

その優しい言葉に、僕は少し救われた気がした。でも、葵さんの笑顔の奥には、どこか寂しげな表情が浮かんでいるようにも見えた。それが僕の胸に突き刺さる。


常連メンバーたちの助言

翌日、僕はユリカさんと涼子さんに、葵さんとの会話を相談した。二人とも僕の気持ちを察し、真剣に耳を傾けてくれた。

「優斗ちゃん、あんたが本当に葵さんを好きなら、覚悟を見せなきゃダメよ。」
ユリカさんはいつもの軽い口調ながら、その言葉には重みがあった。

「そうですね。僕も葵さんには特別な想いがあります。でも、あの条件って、自分と向き合うためのテストでもあると思うんですよ。」
涼子さんの言葉に、僕は思わずうなずいた。

「女装サロンラビリンスで学んだことは、きっと自分の人生にとって大きな意味があるはずだよ。」

二人のアドバイスを聞きながら、僕は自分の気持ちを整理していった。そして、葵さんに本当にふさわしい人間になるためには、もっと自分自身を知り、成長する必要があると感じた。


女装サロンラビリンスの新企画

そんな中、葵さんからまた新たな企画が発表された。それは、「女装サロンラビリンスでの1泊2日特別プログラム」だった。

「このプログラムでは、女装を通じて自分自身を深く知る体験をしてもらいます。」

葵さんの説明に、サロンの常連たちは一斉に盛り上がった。参加者たちは2日間、完全に女装をして過ごし、メイクや衣装だけでなく、内面的な成長も目指す内容だという。

「優斗さんもぜひ参加してくださいね。」
葵さんに直接そう言われた僕は、少し迷ったが、結局参加することにした。このプログラムが、僕にとって大きな転機になるかもしれないと思ったからだ。


特別プログラム初日:自分との向き合い

プログラム初日、女装サロンラビリンスには新しい顔ぶれが集まり、いつも以上に賑やかだった。僕も、初めてのフルメイクとウィッグで完全に女装した姿で参加した。

「優斗ちゃん、似合ってるじゃない!」
ユリカさんがからかうように言ったが、彼女の言葉には本音が混じっているようだった。涼子さんも、
「優斗さん、表情が柔らかくなってきましたね。」
と褒めてくれた。

しかし、このプログラムの本番はここからだった。参加者全員がサロン内での特別なワークショップに参加することになったのだ。その内容は、「自分のこれまでの人生と向き合う」という少しヘビーなテーマだった。


涙と笑顔のワークショップ

ワークショップでは、一人ひとりが自分の思いや悩みを語り、それを他のメンバーが優しく受け入れるという形式だった。初めは緊張していたが、女装サロンラビリンスの温かい雰囲気のおかげで、次第に心が開いていった。

僕も、自分の過去の悩みや、女装を始めるまでの葛藤を正直に語った。話しながら気づいたのは、僕が自分に自信を持てなかったのは、他人の目を気にしすぎていたからだということだった。

「優斗さん、すごく素直に自分のことを話してくれてありがとうございます。」
葵さんがそう言ってくれたとき、僕の心は軽くなった。


2日目のクライマックス:完全な自分

プログラムの最終日、僕たちは「自分が一番輝けるスタイル」をテーマに衣装を選び、サロン内のランウェイを歩くことになった。これは、参加者が自分を受け入れ、他者に誇れる姿を見せるための挑戦だった。

僕は少し派手なドレスとロングウィッグを選んだ。普段なら恥ずかしくて選べないようなスタイルだったが、女装サロンラビリンスのメンバーや葵さんの支えがあったからこそ、挑戦する気になれた。

「優斗ちゃん、すごくいいじゃない!」
「今日の優斗さん、本当に素敵ですよ。」

みんなからの声援を受けながらランウェイを歩くと、胸が熱くなった。これまで女装を通じて自分を好きになりたいと思っていたけれど、この瞬間、初めて「自分を好きでいられる」と思えたのだ。


葵さんへの再告白

プログラムが終わり、僕は葵さんに再び向き合った。

「葵さん、僕、覚悟ができました。24時間365日女装を続けること、それがどんな意味を持つのか、今回のプログラムで少しだけ分かった気がします。」

葵さんは静かに僕を見つめ、
「優斗さん、本当に強くなりましたね。」
と言って微笑んだ。

「まだ完璧じゃないかもしれないけど、僕はこれからも女装サロンラビリンスで成長していきたい。そして、葵さんのそばにいたいです。」

彼女は少し照れくさそうに笑い、そっと手を差し出してきた。
「じゃあ、これからも一緒に女装サロンラビリンスを盛り上げていきましょうね。」

その瞬間、僕は彼女とともに歩む未来をはっきりと感じた。