「女装への助走~オンナノコの秘密☆~」 第6話 俺のコンプレックス

それからの俺は週一でラビリンスに通い、どんどん女装にのめり込んでいった。
相変わらず丁寧で優しい店員のサポートもあってか、抵抗なくその世界へと入り込むことができる。

「こんな俺でも…女性らしくなれるのかな…」

か細い声で勇気を出して聞いてみた。

実は『こんな俺』というのには理由がある。
体型はガッチリしていて肩幅もあり、太ってはいないがまさに男体型。
目は一重で小さく、そのうえまつ毛も短い。
もちろん髪の毛はうっすらとハゲかかってきている。
あえて良い所といえばスラッとした鼻とふっくらとした唇か。
男性ならともかく、女装するには難点だらけの人間なのだ。
いや、そう思い込んでいただけなのかもしれない。

しかし店員はニッコリと微笑んで答えた。

「何を不安そうな顔をしているの、そんな顔をしていたら楽しい時間がもったいないわ……でも一つだけ直したらいいことがあるわね」

俺は耳を傾けて次に出る言葉を待った。
店員は、またフフと小さく微笑んだ。

「それは、言葉使いね」
『あっっ』と思わず声が出てしまった。
店員はゆっくりと頷きこう言った。

「女性は自分のことを俺なんて言わないものですよ」