20,慶次と兼続の事情シリーズ①『親友の秘密』
駅からの、徒歩。
あの日も今日と同じような、心地よい秋風が吹いていた。
三年の時を経て、まさか自分が女装することになろうとは。
慶次の足取りは、重かった。
それとは対照的なのが、リマだ。
世の中にある全ての幸せを手に入れたかのような、そんな満面の笑みを浮かべてラビリンスを目指して歩みを進めている。言うまでも無く、慶次と手を繋ぎながら。
それに引っ張られているような、慶次。
たった今通り過ぎた脇道に、慶次がリマを引きずり込んだのも、懐かしい。
グレープフルーツの香りも、あのときと同じだ。
ただ、もうリマのウイッグは外れない。それが、あのときとの違いだ。
そして、あの建物に着いてしまった。ここにあるのはラビリンス。女装の迷宮だ。