文化祭が近づくにつれ、沙織はさらに強引になった。衣装合わせ、メイク練習、さらには声のトレーニングまで拓也に課す。

「お兄ちゃん、もっとかわいい声出して!」

「無理だって、男だぞ俺は!」

「そんなこと言ってたら本番で恥かくよ!」

最初は楽しんでいた拓也だったが、次第に疲れが見えてきた。文化祭準備のため、友人との約束も断り、沙織に付き合う日々に苛立ちを覚えるようになる。

「お前、少しは俺の都合も考えろよ!」

「何よ!お兄ちゃんだって協力するって言ったじゃん!」

二人の間に険悪な空気が流れる。沙織はリビングで一人、涙をこぼしていた。