ある日、沙織が妙にニヤニヤしながら拓也に声をかけてきた。

「お兄ちゃん、今度の文化祭で手伝ってほしいことがあるんだよね。」

「また何か面倒なこと?」拓也は嫌な予感を覚えた。

「うん!演劇部の出し物でね、男の子の役を女の子にやらせるんだけど、その逆もしたいの。つまり…お兄ちゃんに女装してほしい!」

「はぁっ!? なんで俺が!」

「だって、お兄ちゃん背も高くて顔立ちも整ってるし、絶対似合うもん!」

沙織の褒め言葉に少し心が揺れるものの、拓也は断固拒否する。

「絶対嫌だ!」

しかし、沙織は諦めない。ある日、無理やり部屋に押し込まれ、強制的にドレスとウィッグを着せられる羽目に。拓也は抵抗するものの、沙織の圧に負けてしまう。

「ほら、鏡見て!」

鏡に映った自分を見て、拓也は言葉を失った。そこには、まるでアイドルのような少女が立っていたのだ。

「これ、本当に俺なのか…?」

「でしょ?ほら、もっとポーズ決めてみてよ!」

沙織の無邪気な笑顔に、拓也はつい流されそうになる自分を感じていた。