父の怒りは収まらなかった。

「お前のそんな姿、俺は認めない!男としてもっとしっかりしろ!」

僕は沙織の背後に隠れるように立ち尽くしていた。父の怒声が心に突き刺さり、言葉を返すことができなかった。だが、沙織は一歩も引かず、父を睨み返した。

「優斗くんは、自分が何に興味を持っているのか素直に向き合っているだけよ。それを責める権利があなたにあるの?」

「沙織、君は黙っていてくれ!」

父は声を荒げたが、沙織は動じることなく続けた。

「私は黙っていられない。彼は自分を表現しているだけよ。それが女装であろうと何であろうと、彼の自由じゃないの?」

沙織の言葉には力強さがあった。その瞬間、僕の心に小さな光が灯った。