父がその場を去った後、僕は肩を震わせながら沙織に感謝の言葉を伝えた。
「沙織さん、ありがとう……僕を庇ってくれて。」
沙織は優しく微笑みながら、リビングのソファに腰を下ろした。
「優斗くん、ちょっと聞いてくれる?」
彼女の語り始めた話は、意外なものだった。沙織にも「普通」とは少し違う幼少期があったという。
「私ね、小さい頃は男の子みたいに振る舞うのが好きだったの。髪を短くして、ズボンばっかり履いてたわ。」
その言葉に驚いた。沙織がそんな過去を持っていたなんて想像もしていなかった。
「でもね、大人になってから気づいたの。大切なのは、どう見られるかじゃなくて、自分がどうありたいかってこと。」
沙織は僕の手を取って続けた。
「だから、優斗くんも自分を大切にして。誰が何を言おうと、あなたはあなたでいいのよ。」
その言葉に、僕は救われる思いだった。