悠斗は「女装サロンラビリンス」での試練を経て、自分自身と向き合う勇気を手に入れた。しかし、璃音が提示した「最後の試練」とは、自らがこの迷宮の支柱となり、新たな訪問者たちを導く存在になることだった。女装サロンラビリンスは単なる「女装」の場ではなく、それを通じて自分の内面を深く掘り下げる、魂のラビリンスだった。
新たな役割
「悠斗、これからあなたは『ホスト』として、この女装サロンラビリンスを支える役目を担うわ」
璃音から正式に任命された悠斗は驚きを隠せなかった。これまで訪問者として自分を解放することに集中してきたが、今度は他の人々の「自己発見」を手助けする役割を果たす必要があった。
「ホスト……僕が?」
「そうよ。この女装サロンは一人では成り立たないの。私も、慧も、朱里も、皆が支え合っている。あなたもその一員になってほしいの」
璃音の言葉に、悠斗は覚悟を決めた。
初めての案内役
悠斗が最初に案内を担当することになったのは、大学生らしき青年だった。彼は控えめな様子で、「女装サロンラビリンス」に訪れた理由をあまり語らなかったが、その目にはどこか不安が漂っていた。
「ここは初めてですか?」
悠斗の問いかけに、青年は小さく頷いた。
「名前は……陽介です。でも、ここでは『凛(りん)』って呼ばれたいんです」
その言葉に、悠斗は微笑みながら答えた。
「わかりました、凛さん。ここでは、誰でも自分になりたい姿になれるんです」
悠斗は彼をサロン内へ案内しながら、メイクや衣装選びのアドバイスをした。凛が鏡の前で新しい自分を見つめる姿を見て、悠斗は「ホスト」としてのやりがいを感じ始めた。
女装サロンの仲間たち
悠斗がホストとして活動する中で、女装サロンラビリンスの常連たちともさらに深く交流する機会が増えた。慧や朱里だけでなく、新たな仲間も次々と登場する。
美夜(みや):長年女装サロンに通い続けているベテラン。細やかな気配りで他の訪問者たちを支える一方、自身の内面に抱える葛藤を誰にも明かさない。
アキラ:大胆で派手なスタイルが特徴的な若者。初対面では挑発的な態度をとるが、実は寂しがり屋な一面を持つ。
「この女装サロンは、ただの遊び場じゃない。ここでは誰もが自分の弱さをさらけ出せるのよ」
美夜の言葉に、悠斗はこの場所の深い意義を再認識した。
璃音の葛藤
悠斗がホストとしての役割を果たし始めた一方で、璃音の表情に変化が現れ始めた。光と影のサロンを完璧に支配しているように見えた彼女にも、乗り越えられない壁があるようだった。
ある日、璃音が悠斗を呼び出し、こう言った。
「悠斗……私もまだ、すべてを乗り越えたわけじゃないの」
「璃音さんでも?」
「ええ。私がこの女装サロンを作ったのは、自分を隠すためでもあったの。だけど、最近はあなたや他の人たちのおかげで、少しずつ変わってきた気がする」
璃音の真剣な表情を見て、悠斗は彼女にとってもこのサロンが自己発見の場であることを改めて知った。
次なる挑戦: ラビリンスの外へ
璃音が提示した最後の試練は、女装サロンラビリンスの外で自分たちの存在を示すことだった。
「ここは安全な場所だけど、外の世界は違うわ。だからこそ、ラビリンスで培った自信を外で試してみる必要があるの」
悠斗や他のホストたちは戸惑いながらも、サロン外でのイベントに参加することを決意した。イベントは近隣のカフェを借りて行われることになり、参加者全員が「自分らしさ」をテーマにしたスタイルで登場することに。