女装サロンラビリンスは日々賑わいを増していた。訪れる人々は増え、サロンの評判も広がっていた。しかし、悠斗たちはその平和がいつまでも続くわけではないことを薄々感じ始めていた。
璃音がある夜、深刻な顔で悠斗を呼び出した。
「悠斗、この女装サロンにはずっと隠されてきた秘密があるの」
「秘密……?」
「ええ。それをあなたに話す時が来たのかもしれないわ」
ラビリンスの創設の秘密
璃音が語り始めたのは、この女装サロンラビリンスができたきっかけだった。この場所はもともと璃音の友人であり、師でもあった人物――真琴(まこと)が作り上げたものだった。
真琴は、女装を通じて自分自身を表現することを他の誰よりも楽しんでいた。しかし、当時は社会の偏見が強く、真琴がその自由を貫くことは簡単ではなかった。
「真琴は、ここを『逃げ場』としてだけではなく、誰もが安心して自己を表現できる聖域として作ったの。でも、彼女はある日突然姿を消してしまったの」
璃音は、その言葉を絞り出すように語った。
突然の訪問者
そんなある日、サロンに一人の訪問者が現れた。彼はスーツ姿で、他の訪問者とは明らかに異なる雰囲気を漂わせていた。
「ここが『女装サロンラビリンス』ですか?」
その低い声に、悠斗は戸惑いながらも答えた。
「はい、そうですが……」
男はしばらく店内を見回した後、にやりと笑った。
「ここで、ある女性を探しているんです。名前は真琴といいます」
突然の名前に、璃音の顔が硬直した。彼女はその男をじっと見つめながら言った。
「真琴はここにはいません。もう何年も前にいなくなりました」
男は肩をすくめたが、その目は冷たく光っていた。
「そうですか……ですが、彼女が作ったこの『女装サロン』は私にとっても興味深い場所のようですね」
サロンの存続危機
その男が去った後、璃音は悠斗に告げた。
「彼はきっと、ここを潰そうとしているわ」
「どうしてそんなことを……?」
「この『女装サロン』は、ただの娯楽の場じゃない。ここでは、社会の価値観から自由になりたい人たちが集まる。彼のような人にとって、それは脅威になるのよ」
悠斗は璃音の言葉に愕然とした。女装サロンラビリンスが、ただの自己表現の場を超えて、社会に対する挑戦の象徴になっていることに気づいた。
仲間たちとの団結
その危機を乗り越えるために、悠斗たちはサロンの仲間と力を合わせることを決意した。慧や朱里、美夜、そして新しく訪れる人々も含め、皆がサロンを守るために行動を始めた。
「この女装サロンは、私たちの居場所だ。誰にも奪わせない」
美夜のその一言が、全員を奮い立たせた。
外の世界での戦い
悠斗たちは、「女装サロン」という存在を世間にもっと知ってもらうためのイベントを企画した。それは、ただのファッションショーやパフォーマンスではなく、ラビリンスでの体験を通じて自分を見つけた人々が、その思いを語る場でもあった。
イベント当日、会場には多くの人が集まった。女装をしている人もいれば、ただ興味を持った人もいた。その中で、悠斗は自分の体験を語った。
「僕は、女装サロンラビリンスで本当の自分を見つけました。この場所がなかったら、僕は自分を受け入れることができなかったと思います」
彼の言葉に、会場から大きな拍手が起こった。その中には、初めて女装サロンに足を踏み入れる決意をした人たちの姿もあった。
新たな希望
イベントが成功したことで、女装サロンラビリンスはさらに注目を集める存在となった。それは脅威を感じる人々にとっても、無視できない存在になったということだった。
しかし、璃音は言った。
「これでいいの。私たちがただ隠れて生きるだけじゃなく、堂々と自分たちを表現することが、未来を切り開くのよ」
悠斗もまた、ホストとしての役割を再確認し、さらに多くの人々をラビリンスへと導く決意を新たにした。