「天男天女(てんなんてんにょ)①」
「人の性格は顔で決まるのではないか。心と顔は同じくらいデリケートだから・・・。」
女性がコップを置いて僕を冷ややかににらみつけた。「そもそもあんた何の魅力もないもんね。」
「うん・・・。そうかもね・・・。」
「そーゆーあやふやなところ私昔から嫌いだったの。」
昔から嫌いだった。これほど傷つく言葉ははない。
喧嘩の苦手な僕は念仏のように彼女の言葉を聞いていた。
これが、2年も付き合った僕と梨恵の最後の会話になった。
帰りの電車の中で遠くを眺めながら「女性の気持ちってよくわからないなぁ」と思っていた。
いつも無気力な僕、これが加藤優(かとうすぐる)の日常だ。
自分が悪いことをしたと思っていなく自分の何がいけないのか全くわからなかった。