「ところで、いづみさん」
ウェディングドレスに包まれた身体の持ち主から、どう考えてもザ・男っていう声。
「はい? どうしましたか?」
さらさらのロングヘアーの持ち主からは、どう考えても女の子の声。
「その声は、練習したんですか? それとも、元から女の子のような感じなんですか?」
するといづみさんは、にっこりと微笑んで答えてくれた。
「ボイストレーニングを受けたんですよ。女声のレッスンをしている、今は結婚されて女性として生活されている元MtFTSさんが先生をしているスクールで」
「そんなスクールがあるんですか?!」
いやいやいや。そんなこと、無理だろう。もしも本当に女声を出せるようになれたら、女装ライフもますます楽しくなるだろうけれど、流石に典型的な男声の俺……アタシには無理。これはきっと神の領域で、趣味の女装のアタシには、触れられない神聖な、って腕をバタバタさせながら考えていたら、思いのほかウェディングドレスの衣擦れがいい音を発して幸せになった。