全国展開に向けた準備が整い、女装サロンのブランドは着実に広がっていった。しかし、悠斗と美絵の間には次第に溝が生まれ始めていた。
「悠斗、何度言ったらわかるの?この女装サロンが本当に成功するためには、もっと徹底的にやらないとだめよ。」美絵は息を呑んで、悠斗に言い放った。
「でも、僕たちが目指しているのは、万人が自由に自分を表現できる場所ですよね?」悠斗はつい反論した。
「だからこそ、徹底的にプロフェッショナルな場にしなければならないの。自由というのは、手に入れるために戦うべきものよ。」美絵は冷徹な目をし、悠斗に語りかけた。
その言葉に悠斗は沈黙した。彼は、美絵がかつて経験した裏切りの痛みを理解しようと努めていたが、それでも彼女の方法には共感できない部分があった。自由を奪わない形での成長を求める自分と、厳しくプロフェッショナルなスキルを要求する美絵との間で、次第に摩擦が生じていった。
悠斗はサロンの運営をより透明にするために、スタッフと共に話し合い、意見を出し合った。その結果、徐々にサロン内での信頼関係が築かれていった。
「悠斗さん、僕たちは一緒に頑張っているんですから。」スタッフの一人が優しく声をかけてくれた。悠斗はその言葉に励まされながら、再び決意を固めた。