ある日、涼のもとを訪れたのは、一人の中年男性だった。彼は長いコートを羽織り、目を伏せたまま、小声でこう言った。

「僕は…ここに来るべきじゃないのかもしれない。でも…自分がどうあるべきかわからないんです。」

その言葉に、涼は影の女装サロンでの自分を思い出した。かつて、自信を持てず、自分の居場所を見つけられなかった頃の自分と、目の前の男性が重なる。

「ここは、あなたが自分を見つけるための場所です。」

涼は優しく語りかけながら、その男性を女装サロンラビリンスの奥深くへと案内した。

そこで、男性は初めて自分の姿を鏡に映し出した。その表情には戸惑いが浮かんでいたが、同時に、どこか安堵のようなものも見えた。

「自分を見つけるのは簡単なことではありません。でも、ここであなたの新しい一歩を始めてみましょう。」