女装サロンラビリンスで過ごす時間は、次第に僕の日常の一部となり、女装自体も単なる遊びから、自分の生活の一部として意識するようになった。しかし、それと同時に、女装サロンラビリンスという場所の持つ「境界線」が、僕にとって大きな課題となっていた。
外の世界と女装サロンラビリンスの世界には明確な違いがあった。女装サロンラビリンスの中では、誰もが自分らしく、自由に表現できる空間が広がっている。しかし、現実世界では、やはり僕は「男」であり、女装をしている自分をそのまま外に持ち出すことに対して、恐れや不安が芽生えていた。
ある日、サロンに通い始めたばかりの新しい客、亮平さんと話していた時のことだ。亮平さんは、普段はスーツを着た真面目なビジネスマンで、女装サロンラビリンスに来ることでストレスから解放されていると言っていた。しかし、彼もまた、外で女装をしている自分をどこまで出すべきか悩んでいるようだった。
「女装サロンラビリンスでは、すごく自由に振る舞えるんだけどね……外に出ると、どうしても怖くなるんだよ。」
亮平さんは、肩をすくめながら言った。
その言葉に、僕は強く共感した。女装サロンラビリンスの中では、すべてが許されている。しかし、外の世界ではどうしても目を気にしてしまう自分がいる。僕も亮平さんと同じように、女装と現実の間で揺れ動いていた。