「あの……ここ、本当に“女装サロンラビリンス”なんですか?」
緊張で声が裏返るのを感じながら、僕は目の前のドアを見上げた。ネオンが控えめに光る看板には確かに「女装サロンラビリンス」と書いてある。だが、こんな繁華街の裏通りに、まさか本当に存在するとは思わなかった。
扉を開けると、そこにはまるで異世界のような空間が広がっていた。シャンデリアが輝く部屋に、フリルのついたドレスやウィッグがずらりと並んでいる。そして、その中央に立っていたのは……。
「ようこそ、女装サロンラビリンスへ。」
艶やかな黒髪をなびかせて微笑む女性――サロンのオーナー、葵さんだった。