「女装サロンラビリンス」が存続の危機に瀕しているという知らせは、サロンの仲間たちに大きな衝撃を与えた。土地所有権を巡る問題が表面化し、サロンの活動を邪魔する動きがさらに強まっていた。

璃音は深夜までサロンの片隅で書類とにらめっこしていた。そこにやってきたのは、美夜だった。

「璃音さん、一人で抱え込まないで。私たちがいるじゃない」

美夜の優しい言葉に璃音は一瞬、張り詰めた表情を緩めたが、すぐにまた真剣な顔に戻った。

「ありがとう。でも、これは私の責任。ここは私が作り上げたものだから」

「違うわ。ここはみんなで作り上げた場所よ。『女装サロン』は璃音さん一人のものじゃない。私たち全員の居場所なの」

仲間たちの反撃

翌日、サロンに集まったメンバーたちは緊急会議を開いた。慧が冷静な声で提案した。

「土地問題に対抗するためには、法的にもしっかり対応する必要がある。僕の知り合いに弁護士がいるから相談してみるよ」

一方、朱里は資金調達に奔走することを宣言した。

「もっと多くの人に『女装サロン』の価値を知ってもらうために、クラウドファンディングを始めましょう!」

悠斗も負けじと手を挙げた。

「僕も手伝います! SNSを使ってもっと多くの人に広めます。みんなの力を借りて、このサロンを守りましょう!」

全員がそれぞれの力を発揮し、ラビリンスを守るために動き出した。その様子を見た璃音は、目に涙を浮かべながら小さく頷いた。

「ありがとう。本当に、ありがとう……」

クラウドファンディングの成功

クラウドファンディングのキャンペーンは大成功を収めた。「女装サロンラビリンス」という名前とその物語は、多くの人々の共感を呼び、予想以上の寄付金が集まった。

薫やその他の新しいメンバーたちも、SNSでラビリンスへの思いを語り、それがさらに支援の輪を広げるきっかけとなった。

「ここは、ただの『女装サロン』じゃない。私たちが自分らしくいられる場所なんです」

その言葉に、全国から応援の声が寄せられた。

法律との戦い

慧の知り合いの弁護士を中心に、土地所有権の問題に対して法的な戦いが始まった。スーツ姿の男が背後で操る企業が、ラビリンスの土地を強引に買い取ろうとしていることが判明した。

法廷での攻防は長引いたが、弁護士の尽力と、ラビリンスを支持する世論の力によって、最終的にラビリンスの土地は守られることとなった。

璃音は法廷の帰り道、弁護士に深く頭を下げた。

「本当にありがとうございました」

弁護士は微笑みながら答えた。

「『女装サロン』を守りたいという皆さんの熱意が、勝利を呼び込んだんですよ」

未来への一歩

土地問題が解決した後も、「女装サロンラビリンス」はさらなる成長を遂げていた。イベントやメディア出演を通じて、女装文化に対する理解が少しずつ広まり、サロンを訪れる人々の層も多様化していった。

悠斗は、そんな日々の中で自分自身の変化を感じ取っていた。かつてはただの「見習いホスト」だった彼が、今では新しい来訪者たちに寄り添い、彼らの背中を押す存在となっていた。

璃音の決意

ある日、璃音は悠斗をサロンの裏庭に呼び出した。そこには、薔薇が咲き誇る小さな庭園が広がっていた。

「悠斗、この庭はね、私がこのサロンを作る前から手入れしてきた場所なの」

「綺麗ですね……」

「この庭を見ていると、どんな苦しい時でも希望を忘れちゃいけないって思えるの。だから、これからも私はこのサロンを守り続けるわ。どんな困難が訪れても」

璃音の目には、揺るぎない決意の光が宿っていた。

新たな章の始まり

「女装サロンラビリンス」はこれからも、訪れる人々にとっての居場所であり続けるだろう。それは、仲間たちの努力と絆によって築かれた、かけがえのない空間だった。

悠斗もまた、ラビリンスの一員として、そしてその未来を共に歩む者として、新たな目標を見据えていた。