ある晩、沙織が夕食後に父と僕をリビングに呼び寄せた。
「3人でちょっと話しましょう。」
沙織は二人を見つめながら、静かに語り始めた。
「家族ってね、必ずしもお互いを完全に理解する必要はないと思うの。でも、受け入れることはできるはずよ。」
父は黙って沙織の言葉を聞いていたが、やがて僕の方を見て頷いた。
「優斗、いや優花、お前のやりたいことを応援するよ。」
その言葉に、僕は思わず涙を流した。
季節が変わり、春が訪れた。僕は高校を卒業し、進学することを決めた。大学では「優花」としても新しい挑戦をしたいと思っている。
沙織は今でも僕を支えてくれている。そして父も、少しずつではあるが僕を理解しようとしてくれている。
「自分を愛することを恐れないで。」
沙織がくれたその言葉を胸に、僕は新しい一歩を踏み出していく。