女装サロンラビリンスは、都心から少し離れた古びたビルの一室にあった。看板もなく、表の扉には一見して何の特徴もない。ただ、その扉を押し開けた瞬間、非現実的な世界が広がっていた。
ドレスやウィッグ、ヒールが並べられたショールームには、色とりどりのライトが反射して不思議な空間を作り出していた。
受付に立っていたのは、艶やかな化粧を施した男性──いや、女性と言ってもいいほどの完成度の人だった。
「ようこそ、女装サロンラビリンスへ。エリザベート様からの推薦を受けた方ですね?」
名前を告げる前にそう言われ、軽い恐怖を覚えたが、好奇心が勝った。
「こちらでのルールは一つだけ。すべてを受け入れること。それだけです。」
彼の案内で奥に進むと、広い鏡張りの部屋に通された。エリザベートの影響力がここにも感じられる。俺は、自分がどこへ向かっているのか、少しずつ分からなくなっていった。