2,慶次と兼続の事情シリーズ①『親友の秘密』
その女の子とは対照的に、げっそりとした表情で慶次は、親友に吐き捨てるように言った。
「兼続(かねつぐ)……今日も元気そうで」
爽やかなコロンの香りの女の子を、兼続と呼んだ。
「やだなー。この格好をしているときは兼続じゃなくって、リマって呼んでって何度も言ってるでしょ!まったく、慶次は」
少し高めの声ではあるが、間違いなく男性の声だ。
「はいはい、リマさん。今日は、どんなご用ですか?」
「立ち話もなんだし、中に入れてもらうよー」
リマは慶次を押しのけるようにして、半ば強引に部屋に入った。
慶次はドアを閉めると、玄関に脱ぎ捨てられたヒールを死んだ魚のような目で見つめながら、もう一度ため息をついた。