8,慶次と兼続の事情シリーズ①『親友の秘密』
「け、け、け……っ……」
『け???リマさん?どうしましたか?』
振り向いた先に、一番存在して欲しくない親友の顔。兼続は、その名前を呼ぼうにも呼べなくなるほどに、パニックを起こしていた。心拍数が一気に上がり、そして変な汗が全身から噴き出した。
電車も通り過ぎ、車も人も他には誰も居ない、静かな秋空の昼下がり。
柔らかな日差しで二人を包み込む、太陽だけがその光景を見つめていた。
『リマさーん?どこにいますか!助けが必要なら行きますよ!』
生唾をゴクリと飲むと、スマホから聞こえてきた声に、
「あ、あ、大丈夫……です!ええ!大丈夫です……知り合いに……会っちゃって……本当に大丈夫です。ごめんなさい!今日はありがとうございました!」
と言うなりスマホを耳から外すと、通話終了のボタンを震える指で押した。