7,慶次と兼続の事情シリーズ①『親友の秘密』
駅方向に歩く彼女だったが、線路沿いでスマホが鳴った。
間違いなく聞き覚えがある着メロ。そして、二時間前に聞いた、あの弾んだような声。
「はい……あー、はい。緊張していますが、大丈夫みたいです」
兼続だ。
兼続の声だ。
慶次は、無意識に駆け寄っていた。
そして、電話中ということも忘れ、兼続がスマホを持っている方の右肩を叩いた。
「兼続……お前、何してるんだ?!」
ビクッと全身を震わせた兼続はその場に突然立ち止まり、無言でゆっくりと振り向いた。
『もしもーし?大丈夫ですかー?どうかしましたかー?』
スマホから、ゆったりとした女性の声が聞こえる。そしてそこに、線路を走る電車の音が重なる。