16,慶次と兼続の事情シリーズ①『親友の秘密』
慶次が田無に向かうのは、あの衝撃の日以来だ。
あのときは尾行をしたら田無だったが、今回は最初から目的を持って田無に行く。
高田馬場駅で地下鉄東西線から西武新宿線に乗り換えるとき、横を歩く自分より背は低いものの、それでも周りに沢山いる女性よりは身長があるリマを意識した。
だが、リマは見事に溶け込んでいるのだ。
普段から、リマと外で遊んだり、下戸だから飲めないけれども居酒屋で食事をしたりと、仲良く昔から変わらずに遊んでいる。もちろん、リマではなく、兼続の時もある。
あまりにも見慣れてしまっているから、リマは兼続であり、兼続はリマであることは、何の抵抗もなく受け入れている。それが、慶次にとっての当たり前だ。
高田馬場駅から田無駅までは、急行で二十分弱。駅からラビリンスまでは、数分。
慶次の女装デビューまで、あと三十分ほどということである。
リマは慶次が逃げないようになのか、なぜかずっと手を繋いでいる。