数日後、優は思い切って休日にまた女装をしてカフェを訪れることにした。今回はブラウスとロングスカート、落ち着いた色合いのコーディネートだ。大きなリボンのついたバッグを肩に掛け、ウィッグも完璧。少し勇気が必要だったが、もう一度凛に会いたい気持ちが勝った。

カフェに入ると、店内はそこそこ混んでいた。注文を済ませて空いている席に座ると、凛が忙しそうにお客さんに対応しているのが目に入った。やはり彼女は自然体で、周囲の人を惹きつける魅力がある。

しばらくして、凛がテーブルにやってきた。

「お待たせしました。今日も来てくれてありがとう。」

凛の視線が優に向けられる。その一瞬で、優は彼女に見抜かれているのを確信した。

「……もしかして、あの時の?」

凛が小声で尋ねる。優は観念して小さく頷いた。

「ふふ、やっぱりそうだったんですね。」

凛は楽しそうに笑みを浮かべた。けれど、その笑顔に嫌味や侮蔑の色は一切なく、むしろ親近感すら感じられるような温かさがあった。

「安心してください、私も結構秘密が多い方ですから。」

「秘密?」

優が首をかしげると、凛はウィンクをしながらこう続けた。

「私もね、こう見えて……ちょっと変わってるんです。」

その言葉が何を意味するのか、優にはまだわからなかったが、これが2人の距離を一気に縮めるきっかけとなるのだった。