数日後、凛のカフェで閉店後の手伝いをしていた優は、彼女からある提案を受ける。

「小野寺さん、明日休みなら、一緒にショッピングに行きませんか?」

「えっ、ショッピング?」

「うん。あなたに似合いそうな服、いろいろ選んでみたいなって思って。」

こうして2人は休日にショッピングモールで待ち合わせることになった。待ち合わせ場所に現れた凛は、いつものスーツ姿ではなく、カジュアルな男装スタイルだった。

「どうです? これでも『男』に見える?」

「えっ……すごい……本当に男みたい。」

驚く優に、凛は笑顔で答えた。

「私ね、実は男装が趣味なんです。好きで始めたことだけど、これが意外とハマっちゃって。」

その言葉に優はほっとすると同時に、心の奥底で親近感が芽生えるのを感じた。

「じゃあ、これからはお互いの趣味を隠さずにいられるね。」

凛の言葉に、優は深く頷いた。これが2人の関係を新たなステージへと導いていくきっかけだった。

ショッピングモールの中を歩く2人は、すっかり打ち解けていた。凛の男装は見事で、彼女が女性であると気づく人はほとんどいない。優も女装していることを忘れるほど自然体でいられた。

「ここのお店、ちょっと見てみませんか?」

凛が指差したのは、センスの良い女性向けファッションのセレクトショップだった。優は少し躊躇したが、凛の背中に押されて店内に入る。

「これなんて似合いそう。試着してみて。」

凛はすぐにラックから淡いブルーのワンピースを取り出し、優に差し出した。優は戸惑いながらも試着室に入り、服を着替えた。

「うん、やっぱり思った通り!」

試着室を出た優を見て、凛は満面の笑みを浮かべた。

「似合うって言われると、ちょっと嬉しいかも……」

照れたように笑う優を見て、凛は少し目を細めた。その表情にはどこか特別な感情が込められているようだったが、優はそれに気づくことはなかった。