沙織の提案で、僕は初めて女装姿で外に出ることになった。場所は人混みの少ないカフェ。沙織が選んでくれたワンピースとウィッグで装いを整えた僕は、彼女に手を引かれるまま家を出た。

「緊張してる?」

「うん……すごく。」

沙織は笑いながら、僕の肩を軽く叩いた。

「大丈夫よ。あなたならきっと素敵に見えるから。」

カフェに入ると、店内にはあまり人がいなかった。沙織と向かい合って座り、注文を済ませた頃、僕の中の緊張は少しずつほぐれていった。

「こうして見ると、本当に自然に見えるわよ。」

沙織の言葉に、僕は少しだけ自信が持てた。

そのとき、不意に隣のテーブルの女性が声をかけてきた。

「すみません、どこでそのワンピース買ったんですか?」

僕は驚いて固まったが、沙織が笑顔で答えてくれた。

「ネットで探したんです。可愛いですよね。」

女性は満足そうに頷き、僕は安堵の息を吐いた。この一瞬の出来事が、僕にとって大きな自信となった。