悠斗は、女装サロンでの日々が次第に自分の内面に影響を与えていることに気づき始めていた。かつては屈辱と感じた時間が、今では不思議と心に引っかからなくなっていた。

ある日、女装サロンに訪れた客の一人、壮年の男性が悠斗に話しかけた。

「君、なかなか似合ってるじゃないか。ここの女装サロンで働いてるのか?」

悠斗は戸惑いながらも、「まあ、そういう感じです」と答えた。

その男性は、女装を趣味としながらも家庭や社会に隠していることを打ち明けた。

「この女装サロンは、僕にとって唯一の居場所なんだ。君みたいな若い子がここでいることはすごく意味があると思うよ。」

その言葉は、悠斗の心にじわりと響いた。今までは美絵に強制されるだけだった女装サロンでの時間が、誰かの役に立っているかもしれないと思えるようになったのだ。