ここは、東京の片隅にある小さな街。その奥にひっそりとたたずむ建物がある。そこは、女装サロンラビリンスと呼ばれる場所だった。名前の通り、訪れる者を迷宮のような不思議な体験へと誘う特別な女装サロンで、初めて訪れる人はその独特な雰囲気に圧倒されることが多い。
サロンの入り口をくぐった瞬間、甘い香りと、カーテン越しに漏れる柔らかな明かりが涼を包み込んだ。涼は最近、この女装サロンラビリンスの存在を知り、勇気を振り絞って訪れたばかりだ。
「いらっしゃいませ。初めてのご利用ですね?」
店員の優しい声に、涼は緊張しながら小さく頷いた。この女装サロンでは、来訪者に一人ひとり合ったドレスやウィッグ、メイクを提供し、彼らの内なる美しさを引き出してくれる。
その日、涼は女装サロンの個室でメイクアップアーティストの指導を受け、初めて本格的な女装に挑戦していた。鏡に映る自分の姿は、まるで別人のようだった。
「涼さん、とてもお似合いですよ。」
スタッフの一言に、涼は少しだけ照れながら微笑んだ。初めての体験に心が弾んでいると、隣の個室から笑い声が聞こえてきた。
「えっ、本当に似合ってるかな? これ、私にはちょっと派手じゃない?」
その声に涼は耳を傾けた。なんとも明るく、楽しい雰囲気を持った声だった。しばらくして、隣の個室から現れたのは、真っ赤なドレスを着た美しい女性…いや、同じように女装サロンに訪れた挑戦者の一人だった。
「やっぱり目立つかな?」
その人物は涼に向かって話しかけてきた。涼は驚きつつも「似合っていますよ」と答えると、彼…いや彼女は笑顔を浮かべてこう言った。
「ありがとう! 私、奏って言うの。あなたは?」