イベント参加を提案された僕は、緊張で足が震えていた。というのも、この「女装サロンラビリンス」のイベントは、ただの女装体験会ではなく、大規模なコスプレコンテストだったのだ。普段はサロンの中で安心して楽しむだけだったが、これからは人前に出る。「外の世界」に踏み出す大きな一歩だ。

「優斗さん、大丈夫ですよ。」
控室で準備を進める僕の背中を、葵さんがそっと押してくれる。その優しい声に、不安が少しずつ和らいでいった。

僕は「24時間365日女装」の条件を受け入れるため、この機会を成長の場にしようと決心した。
鏡の中の自分を見つめると、女装サロンラビリンスでのトレーニングの成果が現れている。メイクは完璧だし、ウィッグも自然に馴染んでいる。だけど、心の中ではまだ「これが本当に自分なのか?」という疑問が渦巻いていた。

「女装サロンラビリンスで学んだことを信じて。」
葵さんのその一言が、最後の勇気を与えてくれた。

女装サロンラビリンス、華麗に登場

イベントの会場は、煌びやかな衣装を身にまとった参加者であふれていた。ステージ上では次々とパフォーマンスが繰り広げられる。僕は、緊張で固まる体を無理やり動かしながら、ステージ裏で順番を待っていた。

「次は女装サロンラビリンスの出番です!」
司会者の声が響く中、僕たちサロンのメンバーはステージに向かった。葵さんが先頭を歩き、堂々とした笑顔で観客に手を振っている。彼女の姿は、まるで舞台の女神のようだ。

そして、いよいよ僕の番。舞台の上でライトを浴びながら、慣れないヒールで歩くのは大変だったけど、客席からの拍手と歓声が心強かった。何より、葵さんが隣で微笑んでくれている。それだけで、怖さは消えていった。

事件発生!女装サロンラビリンスのピンチ

コンテストも終盤に差し掛かったころ、突然控室で騒ぎが起きた。
「大変だ!女装サロンラビリンスの衣装が消えた!」

なんと、次のステージで使う予定の衣装が盗まれてしまったらしい。スタッフ全員が大慌てで探し回るが、時間がない。葵さんも困った顔をしているが、どこか冷静だった。

「大丈夫、優斗さん。私たちには代わりのアイデアがあります。」

彼女は急きょサロンの倉庫にある衣装を取りに行き、僕たちは即席で新しいコーディネートを作り上げた。普段の練習の成果がここで発揮されるとは思わなかったけれど、限られた時間で仕上げた僕たちの姿は意外にも好評だった。

「さすが、女装サロンラビリンス!」
観客からの声援を受け、僕たちは無事ステージを終えることができた。この出来事を通じて、サロン全体の結束力がさらに強まった気がする。

葵さんの涙

イベントが終わり、後片付けをしているときだった。葵さんがふと一人で外に出ていくのを見かけた。心配になって追いかけると、彼女は夜空を見上げてぽつりと呟いた。

「本当に良かった……みんなが笑顔で終われて。」

その瞳には涙が浮かんでいた。葵さんがどれだけ女装サロンラビリンスを大事に思い、支えているのかが、改めて伝わってきた。僕は、そんな彼女をもっと支えたいと思った。

「葵さん……」
気づいた彼女が僕の方を振り返り、慌てて涙を拭う。
「優斗さん、見ちゃダメですよ。こんなところ。」

「いえ、葵さんの涙、素敵だと思います。」
思わず口をついて出た言葉に、自分でも驚いた。彼女は少し照れくさそうに笑い、
「じゃあ、特別に見逃してあげますね。」と言って微笑んだ。その笑顔に、僕の心臓はまた大きく跳ねた。

新たな試練と決意

イベントの成功を経て、女装サロンラビリンスの評判はますます高まった。新しいお客さんも増え、サロンは大忙しだ。その中で、僕は葵さんとの距離を少しずつ縮めることができている気がした。

けれど、彼女の「24時間365日女装」という条件は、まだ僕にとって乗り越えられない壁だった。職場のこと、家族のこと、世間の目。女装が楽しいと思える自分がいる反面、その全てを捨てられる覚悟があるのか、自信が持てなかった。

そんな僕を見て、葵さんは言った。
「優斗さん、無理をする必要はないんです。でも、少しずつでも良いから、自分のことを好きになってほしい。」

その言葉が僕の心に深く刺さった。自分を好きになる。簡単なようで、とても難しいことだ。だけど、女装サロンラビリンスでの日々を通じて、それが少しずつできるようになっている気がする。

愛の告白と新たな挑戦

そしてついに、その日が来た。サロンの閉店後、誰もいない静かな店内で、僕は葵さんに向き合った。

「葵さん、僕は……あなたのことが好きです。」

彼女は驚いた表情を浮かべたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。でも、覚えてますか?私と付き合う条件……」

「はい。僕、もっと女装を楽しめるようになりたい。自分を好きになって、葵さんにふさわしい人間になれるよう努力します。」

葵さんは少し考えた後、僕に近づき、そっと耳元で囁いた。
「なら、もう少しだけ私を待っていてくださいね。」

その瞬間、僕は確信した。女装サロンラビリンスでの時間は、ただの趣味を超えたものだ。僕の人生そのものを変える、大切な場所になりつつある。