「女装サロンラビリンス」の空気は、どこか新しい風を孕んでいた。璃音と悠斗が心を通わせた夜から数週間が経ち、二人はそれまで以上に深く協力し合いながらサロンを運営していた。お互いに抱く想いはまだ言葉にならないまま、しかし確実に距離を縮めているのを感じていた。

璃音の新しい提案

「悠斗、ちょっと相談があるの」

璃音はサロンの準備を終えた後、慎重に言葉を選びながら話し始めた。

「最近、『女装サロン』に初めて来るお客様が増えているわ。でも、もっと気軽に体験できる場所にしたいと思っているの」

悠斗は頷きながら聞いていた。

「それって、どういう形にするつもりですか?」

「例えば、簡単なワークショップや女装メイクの体験会を開催するのもいいかもしれない。『女装サロン』という言葉に抵抗を感じている人も、少しずつ馴染めるきっかけになると思うの」

璃音の瞳には、サロンをさらに広げたいという強い意志が宿っていた。悠斗はそんな彼女を尊敬しつつも、心の中で小さな不安を抱えていた。

「璃音さんは、本当にすごい人だな……。でも、あまり無理をしてほしくない」

悠斗のサポート

新しい試みを進めるため、二人は毎日のようにアイデアを出し合った。

「これどう思います?初心者向けのメイクセットをプレゼントするっていうのもいいんじゃないですか?」悠斗が提案する。

璃音はその案に感心しながら答えた。

「いいわね!『女装サロン』に初めて来るお客様にも喜んでもらえると思うわ。さすが悠斗ね、頼りになるわ」

悠斗はその言葉に照れくさそうに笑いながらも、心の中で嬉しさが込み上げてきた。璃音に認められることが、彼にとっては何よりの喜びだった。

二人だけの時間

イベントの準備で忙しい日々が続く中、ある夜、サロンで遅くまで作業をしていた二人は、一息つくためにカフェスペースに腰を下ろした。

「最近、本当に忙しいですね。でも、不思議と疲れないんです」悠斗が微笑みながら言うと、璃音も静かに頷いた。

「そうね。悠斗がいるから、私も頑張れるのかもしれないわ」

その言葉に、悠斗の胸は高鳴った。

「璃音さん、僕は……」

一瞬、告白しようかと迷ったが、彼女の真剣な眼差しに言葉を飲み込んだ。

「僕は、もっと璃音さんの力になりたいです。このサロンが、もっとたくさんの人に愛される場所になるように」

璃音はその言葉に微笑みながらも、少しだけ寂しそうな表情を浮かべた。

「ありがとう、悠斗。でも無理しないでね。あなたにはあなたの人生があるんだから」

初めてのワークショップ開催

そして迎えた新プロジェクトの初日。女装メイク体験会には予想を超える人数が集まった。「女装サロン」という言葉に興味を持ちつつも、勇気が出せなかった人たちが一歩踏み出すきっかけになったのだ。

「すごいですね、璃音さん!こんなにたくさんの人が来てくれるなんて」悠斗は目を輝かせて言った。

「本当に良かったわ。この『女装サロン』が新しい扉を開けるきっかけになればいいと思ってたの」璃音の目にも感動の色が浮かんでいた。

イベントは大成功だったが、璃音と悠斗はこれがまだ始まりに過ぎないと感じていた。

璃音の告白

その夜、イベントの片付けを終えた後、璃音は静かに言った。

「悠斗、今日は本当にありがとう。あなたがいてくれたから、ここまで来られたわ」

「そんな、僕なんて……」悠斗が謙遜しようとすると、璃音が彼を真剣な目で見つめた。

「いいえ、あなたは本当に特別な存在よ。この『女装サロン』だけじゃなくて、私にとっても……」

璃音の言葉に、悠斗は息を呑んだ。そして、彼女の想いに応えるように静かに答えた。

「璃音さん、僕も同じです。このサロンが大切だからこそ、璃音さんを支えたいと思っています。そして、それ以上に……璃音さんのことが好きです」

璃音の目に驚きと喜びが混じった感情が浮かんだ。

二人の未来

璃音と悠斗は、お互いの気持ちを確かめ合った夜を境に、二人三脚で「女装サロンラビリンス」をさらに発展させていく決意を固めた。彼らの絆は、サロンの空間そのものに深く根を下ろしていた。

これからも「女装サロンラビリンス」は、多くの人々の人生に影響を与えながら、二人の愛と夢を支える特別な場所であり続けるのだろう。