「女装サロンラビリンス」でのワークショップの成功から数日後、璃音と悠斗は次の計画について話し合っていた。イベントの好評を受け、さらに多くの人にサロンを知ってもらうための新しいアイデアを模索していたのだ。
「悠斗、次はもっと規模を大きくして、ファッションショーみたいなイベントを開いてみるのはどうかしら?」璃音は目を輝かせながら提案した。
「ファッションショーですか?」悠斗は少し驚いた表情を浮かべたが、すぐにその意図を理解した。「確かに、女装の美しさや個性をみんなに見てもらえるいい機会になるかもしれませんね!」
「そうなの。この『女装サロン』は、ただのメイクや衣装の場所じゃなくて、自己表現の場でもあるわ。だからこそ、もっと自由に、自分らしさを発信できるイベントを作りたいの」
璃音の情熱に触れ、悠斗も全力で彼女をサポートする決意を新たにした。
二人三脚で進む準備
ファッションショーの計画が始まると、サロンのスタッフ全員が一丸となって準備に取り掛かった。モデルとなるお客様を募り、テーマを決め、衣装やメイクのリハーサルが行われるたびにサロン内は活気で溢れた。
「璃音さん、このドレス、すごく映えますね!」悠斗は新しい衣装を手に取って感嘆した。
「そうでしょ?『女装サロン』らしさを大切にしつつ、もっと華やかさを出したいと思って選んだの」璃音も満足そうに微笑む。
一方で、準備が進むにつれて二人の距離もさらに縮まっていった。共に働く時間が増える中で、互いの些細な癖や考え方をより深く理解するようになっていた。
小さなすれ違い
しかし、準備が佳境に入るにつれて、忙しさが二人に影響を及ぼし始めた。ある日のこと、悠斗が衣装の手配でミスをしてしまい、予定していたドレスがショーに間に合わない事態が発生した。
「悠斗、どうしてもっと早く確認しなかったの?」璃音は焦りから少し厳しい口調で問い詰めてしまった。
「ごめんなさい、璃音さん。でも、他の準備も同時進行だったから……」悠斗も自分を責める気持ちを抱えながら言い訳をしてしまった。
その場は一旦収まったものの、二人の間には微妙な空気が流れた。
想いを確かめ合う夜
その夜、悠斗は自分の行動を反省しながら、璃音に向き合うことを決意した。サロンの片付けが終わった後、彼は璃音を呼び止めた。
「璃音さん、今日のこと、本当にすみませんでした。もっと慎重に対応すべきでした」
璃音は少し驚いた表情を見せたが、すぐに静かな声で答えた。
「いいのよ、悠斗。私も言い過ぎたわ。あなたが一生懸命やっていること、分かってるから」
二人はお互いに謝罪し合い、ようやく微笑みを取り戻した。そして璃音は、少し照れくさそうに続けた。
「悠斗、私はあなたに頼りすぎているのかもしれないわ。でも、それはきっと……あなたがいると安心できるからなの」
「璃音さん……僕も同じです。璃音さんがそばにいるからこそ、僕はここまで頑張れるんです」
二人は静かに見つめ合い、その場に言葉以上の想いが満ちた。
ファッションショーの成功と新たな決意
ついに迎えたファッションショー当日。「女装サロンラビリンス」が用意したステージには、輝くスポットライトが当たり、多くのお客様が集まっていた。
「次のモデルは、私たちのサロンでも人気のメイク講師、悠斗さんです!」璃音がマイクを持ちながら紹介すると、悠斗が照れながらも堂々とした姿でステージに登場した。
「悠斗、似合ってる!」璃音がステージ裏から声をかけると、悠斗は笑顔で手を振った。
イベントは大盛況で幕を閉じ、サロンの評判はさらに高まった。
璃音と悠斗、そして未来へ
ショーの後、璃音と悠斗は少し離れたカフェで打ち上げをしていた。
「本当にお疲れさま、悠斗。あなたのおかげで今日は大成功だったわ」璃音は感謝の気持ちを込めて言った。
「僕一人じゃ何もできませんよ。璃音さんがいたから、僕も頑張れました」悠斗は静かに答えた。
璃音はしばらく黙った後、小さく微笑んだ。
「悠斗、これからもずっと、このサロンを一緒に作り上げてくれる?」
「もちろんです。璃音さんと一緒なら、どんな未来でも乗り越えられる気がします」悠斗の声には、揺るぎない決意が込められていた。
二人はその夜、初めて手を繋いだ。