「女装への助走~オンナノコの秘密☆~」 第1話 嫌みな上司の悩ましい顔

「吉村君このファイルなんだけどね、新入社員でももっと内容のあるものを提出するよ」
「安藤課長申し訳ありません」
「謝ってくれなくてもいいから、午後の会議に間に合うように修正して」
「はい…」

この嫌味な上司は紛れもなく、俺。
どうして俺は、こんな物言いしかできないのだろう。
わかることといえば吉村君が中性的な顔をしていること。
俺は、女性のような長いまつ毛を伏せて必死に謝る吉村君の顔を見ていると苛立ちを隠せなかった。
ストレートに言おう。
俺は吉村君の可愛らしい顔に嫉妬していたのだ。
吉村君も上司がこんな感情を抱いているとは、夢にも思わないだろう。

そして、俺のもう一つの感情。
『女性らしくなりたい』
こんな願望は社内のみならず妻も娘も知らない裏の欲求であった。

俺には4つ年上の姉がいる。
小さい頃よく姉は自分のワンピースを俺に着せ、からかって遊んでいた。
「やめろよ!」と怒りながらも実は女に変身した自分を鏡に映すのが好きだったのだ。