「女装への助走~オンナノコの秘密☆~」 第3話 昨日の興奮

今日も変わらず1時間前には出社。
社内は『シーン』と静まりかえっている。
まだ誰もいない職場に一人でいるこの時間が好きでたまらない。

ふと昨日のことを思い出す。
妻のイヤリングを耳に当てがったことだ。
あの緊張感と達成感を思い出し、何ともいえない感情がまた込み上げてくる。
一瞬だったが、薔薇のイヤリングは、俺の耳になじんでいたような気がする。
アクセサリーを一つ身につけただけで、ほんの少し女性らしくなれたような気がした。

『もっと…もっと女性らしくなりたい』
もはやこの衝動を押さえることは無理かもしれない。

「安藤課長お早うございます、相変わらずお早いですね」
部下の吉村君だ。
「ああ、お早う」
都合のいいことに、俺と吉村君の2人以外誰もいない。

「ち、ちょっと教えて欲しいことがあるのだが…君はその…女性にアクセサリーをプレゼントしたことはあるのか」
「えっ…どうしたんですか?課長がそんなことを聞くなんて」
「いやいや、妻との結婚記念日でね」
「ああ、それでしたら駅前のジュエリー店で一度彼女にプレゼントしたことがありますよ」

吉村君の顔をまともに見ることができない。
よし、会社帰りに寄ってみようか…。