5,慶次と兼続の事情シリーズ①『親友の秘密』
二時間近く経っただろうか、一人の女性が出てきた。
(はは~ん。もしかしなくても、兼続の彼女だな)
どこか寂しげな笑みを浮かべた慶次は、この場でずっと立ったまま待っているのも飽きたからと、その女性を追ってみることにした。近くのコンビニか、駅前のデパートか、いずれにしても買い物をしたら、また戻るはずだと予想して。兼続を置いて、彼女だけ別の用事に行く可能性もあったが……仕事とか。もしかすると、他の男に会うのかもしれないし。
慶次は、その現場を押えてやろうと、勝手に探偵気分で尾行をしていた。
それにしても、可愛い雰囲気の女の子だ。グレープフルーツだろうか、柑橘系の爽やかな香りが、向かい風に乗って鼻孔をくすぐる。どちらかというと、好きな香りだ。
だが、彼女の後ろ姿を見ていると、ちょっとした違和感を覚えるのだ。