ある日、涼が女装サロンに訪れると、奏が新しいドレスを試しているところだった。シックな黒のドレスに身を包んだ奏は、いつも以上に美しく、涼は思わず目を奪われた。
「どう? 今日の私は少し大人っぽいでしょ?」
奏が笑いながら振り返る。その姿に涼は少しだけ胸が高鳴るのを感じた。
「すごく素敵だよ。まるで映画の主人公みたいだ。」
「えっ、本当に? 涼に褒められるとなんだか嬉しいな。」
その一言に、涼は戸惑いを隠せなかった。友人としての関係だったはずが、いつの間にか奏に特別な感情を抱いていることに気づいたからだ。
涼はその気持ちをどう扱えばいいのかわからず、ただ黙って笑顔を返すしかなかった。