ある日、三人がサロンで衣装選びをしている最中、葵がふと涼にこう言った。
「涼、君が選んでくれるドレスって、本当に僕に似合うんだよね。まるで僕のことをよく知っているみたいだ。」
その言葉に、涼は照れくさそうに微笑みながら答えた。
「そんなことないよ。でも、葵にはどんな衣装も似合うから。」
そのやりとりを横で聞いていた奏の胸には、小さな痛みが走った。
(涼が葵に向ける笑顔、最近あんな風に笑ってくれることが少なくなった気がする…。)
奏は自分の中の不安を押し殺しながら、表面上は明るく振る舞い続けた。しかし、その感情は次第に隠しきれないものになりつつあった。