ある日、涼は閉店後にサロンの一角で見慣れたノートを見つけた。それは、初期の頃から訪れてくれたお客様たちが自由に感想やメッセージを書き込んでくれた「来店者ノート」だった。

「このノート、懐かしい…」涼は手に取ると、ページをめくり始めた。そこには、初めて女装に挑戦した人々の感動や喜びの声がたくさん詰まっていた。

「ここで初めて本当の自分に出会えた気がします」

「いつも温かく迎えてくれてありがとう」

「また必ず来ます」

涼はその言葉一つ一つを読んで、胸が熱くなるのを感じた。「これが、私たちの原点だったんだ。」

翌日、涼はそのノートを奏と葵に見せた。「これを読んで、もう一度考え直したいの。私たちが本当に大切にすべきものを。」

二人もそのノートを手に取り、静かに読み始めた。やがて、奏が口を開いた。「確かに、私たちは大事な何かを置き去りにしてきたのかもしれない。」

葵も同意する。「もっとお客様一人ひとりと向き合う時間を大切にしなきゃね。」