気づけば、普段の生活にも女装が溶け込んでいた。最初は部屋の中だけだった。それが徐々に、近所のスーパーやコンビニへと範囲を広げていく。外出先でヒールを履く感覚、スカートが風に揺れる感覚は、新しい解放感を僕に与えてくれた。

しかし、それと同時に周囲の視線が気になり始める。電車の中でひそひそと聞こえる声、職場での同僚の奇妙な目つき。僕は「自分らしさ」を追求する一方で、「周囲にどう見られるか」という不安に苛まれるようになった。

そんな中、リナさんの言葉が心に響く。

「自分らしさは、誰かに認められるものじゃなく、自分で受け入れるもの。女装はそのきっかけにすぎないんです。」

彼女の言葉に勇気をもらい、僕はもう一歩踏み出す決意をした。