それから僕は、週末になるたびに女装サロンラビリンスを訪れるようになった。女装サロンで過ごす時間は、次第に僕にとって特別なものとなり、単なる「遊びの場」ではなく「心の避難所」となっていった。鏡の前でメイクを施し、華やかな衣装をまとい、まるで違う自分になれる時間は、日常のストレスや不安を忘れさせてくれる。

「女装サロンに来る人たちって、みんなそれぞれに理由があるんだよね。」

常連の舞さんが、カウンターでカクテルを片手に言った。

「ここは、ただの『女装サロン』じゃない。自分と向き合う場所でもあるの。」

僕は舞さんの言葉に深く頷いた。女装サロンで出会う人たちは、それぞれが異なる背景を持ちながらも、「自分らしさ」を探し求めている。彼らと語り合う時間は、自分自身についても考えさせられる瞬間だった。

そんなある日、女装サロンラビリンスで、かつての同級生である大輔と再会する。彼は普段は真面目な公務員で、スーツ姿しか見たことがなかった。しかし、目の前の彼はまるで別人だった。金髪のウィッグをつけ、黒いレースのドレスを身にまとった姿は、記憶の中の大輔とはまったく違っていた。

「お前、こんなところに来てたのか!」

大輔は驚いたように目を見開いたが、すぐに笑顔を浮かべた。

「まあ、俺もお前に同じことを言いたいけどな。」

二人はお互いにぎこちなく笑いながら、女装サロンでの過ごし方について話し始めた。大輔もまた、女装サロンが彼にとって大切な場所であることを語った。

「俺さ、ずっと仕事のストレスに押しつぶされそうだったんだ。でも、この女装サロンに来て初めて、本当の自分を受け入れることができた気がする。」

彼の言葉には力強さがあった。僕もまた、女装サロンという場所の持つ特別な力を実感していた。